書籍履歴

書籍履歴 BOOKS I'VE READ

友人たちに、読んだ本の紹介。ときどき、音楽も。というかほとんどただのログ

follow us in feedly

短編の良さを見出した 『いずれは死ぬ身』

くすぶり消えかけていた「小説が好きだなあ」という炎が1年くらいかけて息を吹き返してきて、いよいよメラメラメラメラと立ちのぼってきた感じがします。 

いずれは死ぬ身

いずれは死ぬ身

 

作者の柴田氏が翻訳した色んな作家の作品のオムニバスです。 友人が貸してくれました。
スチュアート・ダイベックトム・ジョーンズが特に良いよ、ということで。

今まで、短編集を好んで選んだことがなかったんだけど、良いです!
今の自分じゃなければ、この感覚は無いし、この短編集が良質だったということもありますが。限られた時間の中で、一日一作という感じで読み切れてとても良いんです。寝る前に読めれば幸せ。

精神状態がクソだったところに、「まだこの年になっても初めて出会う小説にこんなにわくわくできるんだ」ということで生きる希望が湧いてきました。

一作ずつ、ちょこちょこっとメモったので書きます。

ペーパーランタン Paper Lantern / スチュアート・ダイベック

借りてすぐ、フライング的に2ページほど目を通した。それだけで、「あ。これは、間違いなく好き。」すっごくわくわくした。文体がすごく好きだった。

・気に入ったフレーズ

「空腹を焼く熱いお茶」

「ここでは肉体のみならず、想像力も滋養を受けずにはいない。」

是非とも、他の作品を読みたい。

ジャンキーのクリスマス The Junky's Christmas / ウィリアム・バロウズ

 すごく良かった。あれ?こんな良かったっけ?
裸のランチは、読んだはずだけど記憶に残っていない。どうやら、ほっこりする話は珍しいみたい。この話が良かったからといって裸のランチが良いとは限らないがもう一度読んでみようと思う。

青いケシ Blue Poppies / ジェーン・ガーダム

自分はお目にかかったことないけど、こういう変わった怖い人との間でちょっとしたエピソードが生まれることってありそうだ。あの時のあれ、なんでそうなっちゃったんだろう。

冬のはじまる日 First Day of Winter / プリーズ D'J パンケーク

リアリティある1家族の話。映画にもできそうだ。兄家族は家を出ちゃって弟が老親のめんどうをみてて、ぬけだせない話。他の話が読みたかったけれど翻訳は雑誌に掲載された物しかない。バックナンバーを取り寄せた。

スリ PickPocket / トム・ジョーンズ

最高だ! ハンパない!原書を読んでみたくなってアメリカから取り寄せた。発送はすぐだったが6週間もかかった! 英語は、読めない!雰囲気で読む!

友人によればこの人は短編しか書いていないらしい。元アマチュアボクサーで、海兵隊に入ったけど病気で除隊(癲癇?)して、コピーライターとか学校の用務員をしながら小説を書いた人。今は、執筆の手は止まっているとか?

血糖値とかインシュリンとかそんなことばっかり調べている時に読んだんだ。これを読んでオートミールを食べてみようという気になった。まだ、食べていない(買った)。そしてこの記事を下書き保存しているうちに遂に食べた。まずい!調理の仕方を研究しないと(水の量とか)このままでは無理。

舞城王太郎が翻訳したコールド・スナップも最高だった!

トム・ジョーンズで検索するとおっさんの歌手が出てくるけどそいつは違うぜ!

イモ掘りの日々 Casual Labour / ケン・スミス

正直、この話はしんどかった。
何を何に例えているのかよくわからなかった。
古典経済学とか、勉強していたらわかるのか?みたいな。

盗んだ子供 The Stolen  Child / クレア・ボイラン

面白くもつまらなくもなかった。子供を盗むんだけどやっぱりキツイやと思ってすぐ捨てたから川に落ちて、それを見捨てられなくて助ける話。盗まれた方は....

みんなの友だちグレゴールブラウン Good ol' Gregor Brown シコーリャック

スヌーピーの話とカフカの変身が合体したいたいな漫画。
別に、いらんと思った。

いずれは死ぬ身 Mortals / トバイアス・ウルフ

特に、なし。

遠い過去 The Distant Past / ウィリアム・トレヴァー

好き。
町のみんなと思想が違う、老いた兄妹が時間の経過と共に朽ち減っていく親の遺産で暮らしている話。
13ページの小説の中にすごく時間の流れがある。読みなおさなければいけない感じはある。情景が浮かぶ。

町のなかと、その向こうで、彼らは無害な変わり者と見られていた。

彼ら(主人公の兄妹)は何も変わらないんだけど、社会が変わることで彼らの無害さが変わってしまい、彼らも変わらざるを得なくなる。主人公が60代というのがまた良し。

人生クソなんだけどやっぱり死なないんだよね。
老人の貧乏ってほんとやだなあ。

強盗に遭った Robbed / エレン・カリー

特に、なし。

ブラックアウツ Blackouts / ポール・オースター

戯曲。特に、何も感じず。
小説『幽霊たち』の原形らしいが、読んだかな?記憶にない。
自分は、ポール・オースターが好きだと思い込んでいるだけでそんなに好きではないんじゃないだろうかという疑念が湧いた。

同郷人会 Landsmanshaft / メルヴィン・ジュールズ・ビュキート

これもよくわかんなかった。
向こうの宗教や習俗を理解しないと面白くないのかも。
宗教って、教義を理解することよりも、それぞれの地域や国の人々にとってその宗教がどういう存在なのかとか、どういう関わりをしているのかっていうことが重要なんだよね(教義抜きにはそれすらも理解できないとも思うし、それ抜きでも分かる部分もあると思う)、ということを実体験として理解した。

Cheap Noveltries ベン・カッチャー

この短編集に、まんがはいらん!全然よさもわからん!

あと何故これだけ邦題がない?

自転車スワッピング Swopping Bikes / アルフ・マクロラン

自転車のくだりは、描写含めて非常に面白かった。

主人公が、若い頃に挑戦した坂を下りながらお互いの自転車に乗り移った(Swopping Bikes)時の回想を読めば、自分の10代の頃の自転車トラブルも色々と思い出す。坂で二人乗りで盛大に転んでお腹で支えたTハンドルが曲がったこと、お腹にくっきりとついたハンドルの後と、自分の腹筋えらいと思ったこと。
信号機のBOXにぶつかったこと。
誤って寄ってしまい、速度が出た状態で柵につかまったらそこが支点となって大ゴケしたこと。
自転車の想い出抜きにしても良かった。

Aが 病気で死にそうなBのことを気遣ったりしながら色々ともんもんとするなか、Bは意外にひょうひょうとしていてあっさりと心配事が....

そういうことってあるよね。

準備、ほぼ完了 Ready,Almost Ready / リック・バス

ジョロ(釣り人、老人。)

観察者の目から書かれていることがプラスなのかもしれない。

ローテクで腕のある老人が成果をあげるという設定を決めた時点で80%くらい完成だったのかな。あとは、文章力と情景を書くための体験値かと。

最後だけ急に、老人が主格の文章になるんだよなあ。

フリン家の未来 The Future of the Flynes / アンドルーショーンガリア

ゼッンゼンオモシロクナカッタ

 

以上。

この本を読んでいる間の私は、こういうメモを残していた。

「願わくば一人がけのソファーが欲しい。深く体がしずみこむ、ひじかけのあるもの。」

それからこんなことを思っていた

「どこかのちょっと贅沢なホテルにこもって部屋から一歩も出ずにひたすら本を読んでいたい。」

どちらも、まだ実現していません。