長いことアップし忘れていた読書履歴。
「大きくなること、それは悲劇である」。この箴言を胸に十一歳の身体のまま成長を止めた少年は、からくり人形を操りチェスを指すリトル・アリョーヒンとなる。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出す。静謐にして美しい、小川ワールドの到達点を示す傑作 ▶Googleブックスより
また定位置が好き系だ!読み始めてまず、そう思いました。
小川洋子2冊連続であり、前回読んだ「ことり」に続いて定位置に体を収めることで精神を落ち着かせる登場人物。このスタイルが好きなの?
小川洋子の小説からは、自分が読んできた好きな小説たちの色々な要素がちょびっとずつ散りばめられている印象を受ける。お楽しみアソートセットのクッキー箱のようなイメージだ。お酒好きならば、ミニボトルセットとでも例えようかしらといったところ。
マスターが、ケッチャムだった。
ぜんぜん、ケッチャムのカッコ良さからは離れているけれど、主人公にとってのチェスの師匠であるマスターは、「あの川のほとりで」のケッチャムだった。
私にとってのケッチャムは、憧れるくらいかっこいい野暮ったさと力強さとポリシーを兼ね備えた人物で、マスターは、全然憧れないしだめだめな人だと思うんだけど、ケッチャムを思い出さずにはいられないね。いちいち思い出したね。
長いけどまた読みたくなっちゃうよね。あの川のほとりで。